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東京大学 [大学紹介]

現東京大学総長 小宮山  宏様より

受験生の皆さんへ

現在,人類は多くの問題に直面しています。
民族問題,貧困の問題,テロリズムの問題,価値観の相克,心の空洞化,地球環境問題,
エネルギー資源の問題,高齢化社会の問題,過疎の問題,大都市に付随する数々の問題など,
文字通り枚挙に暇がありません。
いまこそ英知を結集して,こうした問題の解決にあたらなければなりません。

ところが,20 世紀に知識が爆発的に増えた結果,かえって,私たちの最大の武器である知を
有効に使えないというジレンマに陥っているように思われます。

社会的な問題の全体像を把握し,知識の全体像を把握し,知によって問題を解決する,
そのことが困難になってきているのです。つまり,私たちが抱えるさまざまな困難の背景には,
全体像を把握できなくなったという,知に関する基本的な問題が潜んでいるのです。

このような時代にあって,知識の洪水に溺れないためには,専門を深く学ぶと同時に,専門
知相互の有機的関連を図り,常に頭の中で知の構造を描きながら全体像を求める努力が大切です。

それは,21 世紀という時代において,問題の本質をつかむ知を養うということであります。

人類はさまざまな困難に直面しています。それらの問題の多くはそのような知によってのみ
解決の道が開かれてゆくはずです。そして,知を行動につなげる勇気は,自分は本質をつかんでいる
という確信があってこそ生まれるのです。そうした人を,時代が求めております。

東京大学,そこに集う私自身を含めた教職員は,世界の先進大学として,時代の困難に立ち向か
う使命感を感じております。

私たちの使命感を,現実に社会を動かす力とするためには,先頭に立って一歩前に踏み出す
勇気をもつことが必要でしょう。

しかし,「本質を捉える知」を養い「先頭に立つ勇気」を育む上で,他者との交わりはきわめて
重要であることも忘れてはなりません。

人というのは,意外性に満ち,相互に影響をおよぼし合い,変化していく,誠に魅力的な存在です。
だからこそ人との関わりは何ものにも代え難い,人生を豊かにするものです。

人との関わりを通じて,「他者を感じる力」を備えた,感性豊かな人になってください。

東京大学は,「本質を捉える知」,「先頭に立つ勇気」,そして「他者を感じる力」を育みたいと
考える人々の入学を期待しています。
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